2016/10/11
今回は、経営改善のための財務分析 その1 原価率の検討 についてです。
経営改善のために、決算書の検討、つまりは、財務分析をすることは重要です。
決算書の財務数値という事実に向き合い、客観的事実から優先順位を設けて、それに従い改善を繰り返すことが経営改善には必要です。
その1として、原価率の検討 について説明します。
原価率は、売上高に直接的に対応するコストである原価の、売上高に対する割合、です。
つまり、
原価率 = 原価 ÷ 売上高
です。
サービス業においては、原価がほとんど生じない事業もあるかもしれませんが、多くの事業では、原価が生じていると思います。
例えば、
・飲食店の場合 材料費、飲料費
・美容室の場合 美容材料費、材料仕入高
・建設業の場合 材料費、消耗品費
などが、原価に該当します。
そして、経営改善において最も大切なことは、それぞれの企業において、適切な原価率のあり方を模索し続けることです。
つまり、原価率は、業種や、同じ業種においても、おかれた環境や顧客ターゲット、経営戦略が異なれば、適切な原価率というものは、変化して当然です。
ただし、利益の追求という観点からは、当然のことながら、原価率は低い方が好ましいです。
やはり、事業を継続する以上、適正な利益を実現できる見込みがないと、高いモチベーションを保つことは困難だと思います。
そのためには、それぞれのおかれた環境等に応じて、適切な原価率を模索していくことが重要だと思います。
例えば、低価格戦略によって、ボリュームの増加によって利益を増やすことを目標にした場合には、何らかの理由によって、原価率を相当低く抑えないと、十分な利益を確保できない可能性が高まります。
なぜなら、タダでさえ販売単価が低いにも関わらず、原価率が高いと、販売単位当たりの利益が小さくなり、固定費を回収し、損益分岐点を実現することが困難になり、経営リスクが高い状態であることがわかると思います。
一方で、原価率が高いことが、必ずしも悪い経営とは言えないケースもあります。
例えば、固定費が低い場合、在庫ロスのリスクが低く高級品を扱っており販売単価が非常に高額な場合には、原価率が多少高くても、適正である場合も考えられるからです。
ここまで説明すると、各企業のおかれた環境において、適正な原価率を模索することが必要と申し上げてる意味が少しはご理解いただけると思います。
ただし、理論的、また、現実的に、低価格戦略を採用できるのは、大資本を持つ大企業か、特殊条件が整っている企業に限ります。
なぜなら、低価格戦略の必須条件は、低価格でも原価率が低く抑えられることにありますが、低価格なのに原価率を低く抑えるためには、大量生産や、海外生産、海外仕入等、生産性を高めるか、特殊ルートを持っている等の理由が必要になるからです。
つまり、大企業以外の企業は、低価格戦略を採用すると、失敗するリスクが高いことがお分かりいただけると思います。
そのため、大企業以外の企業は、適正価格によって、適正原価率を実現することが、失敗するリスクを低減することになることがお分かりいただけると思います。
しかし、各企業、適正原価率を実現するには、ノウハウ、技術、知恵が必要なります。
例えば、一般的な材料を美味しく料理する技術、普通の人にプロ並みの生産性を上げさせるノウハウ、知恵、それを実現できるためのポジショニング、その他…
適正原価率を考えるためには、固定費とのバランスも重要です。
なぜなら、固定費の水準と、原価率の水準のバランスによって、損益分岐点や計画利益実現売上高は、相違してくるからです。
CVP分析の結果として、理論上の計画利益実現売上高が計算できたとしても、そのボリュームの実現可能性を、そのマーケットの潜在能力とのバランスで考えた上で、原価率設定、操業度設定、投資の可否等を判断することが重要です。
ただ、やはり、業種ごとに原価率のターゲット数値というのは一般化されているので、最低条件である各業種の原価率をターゲットにした上で、CVP分析の上、事業計画を作成し、投資判断を行うことが賢明な選択です。
例外的なケースを除き、高い原価率での事業計画は、つらい経営になることをご理解ください。
また、原価率の定期的な検討は、経営改善のための財務分析において不可欠であることをご理解ください。